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内藤礼「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」
内藤礼の作品に初めて出会ったのは、2008年の横浜トリエンナーレ、三渓園だった。
茅葺屋根の横笛庵という薄暗い茶室の中、
糸が1本垂れていて、畳の上に置かれた電熱器に温められ、わずかに揺れていた。

あまりのシンプルさに、何だこりゃ意味わかんないと思った。度肝を抜かれた。
何だかよくわからないけど、それは微細で美しい光景で、深く印象に残っていた。
内藤礼は謎の人だった。

そんな内藤さんのアーティストトークがあるいうことで、鎌倉の神奈川近代美術館へ。

「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」
哲学的なタイトルの展示。


アーティストトークは寒い中、中庭で行われた。
ふたつのビニールテープが風に揺らめく作品「精霊」の下で。
入りきれないほどの大盛況。これには美術館側も驚いていたよう。
内藤さんは作品と同じく、落ち着いた雰囲気の素敵な人だった。

最初に作品を見て、笑っちゃうほど意味わかんない!と思った作品もあったけど、お話を聞いてなるほどと納得。
本当に話を聞いてよかった。わけがわからないと思ったものが神聖なものに感じられるようになったりして。
最初の印象と、内藤さんの言葉をずらずら書いておく。
物静かな印象の内藤さん、最後に熱い言葉を発した。


「地上はどんなところだったか」
普通は絵が並べられているであろう、ガラスのショーケースの中、
その床面にちょこっと花柄の布が敷かれ、連なった豆電球が置かれている。
その脇には水が入った瓶、たたまれた布。
上には小さな風船がふわふわしていた。
わからないものがいっぱい並べられていて、すごい不思議空間。

ショーケースは中に入れるようになっている所があり、
(一人ずつしか入れないので長いの列が)
中に入るとその人自身も作品の一部になり、見られる立場になる。

このインスタレーションは、この場所ならではのもので、ガラスケースが上手く生かされていた。
人がいっぱいだったから最初見た時は気づかなかったけど、電球の光がガラスに幾重にも映りこんでいて幻想的な空間をつくっていた。
電球が置かれているのは奥行50cmほどだけど、もっともっと広い世界が見える。



「」
照明の無い薄暗い部屋にこま切れになった布が敷き詰められている。
緑色の細かい花柄の布。
これまた、意味わからん!と思ったのだけど、じっと見ていると色々なものが見えてきて、面白くなってきた。
布の重なりとか、同じ柄の布だけど微妙に色が違うこととか。
そんなことを一緒に行った人と話して意味を考えたりして、そんなことも面白かった。
じっと見ていると、この布が野原のようにも見えたし、細かい柄がデジタルのドットのようにも見えた。



そんな布の端に、10cmほどのとても薄く丸い紙の束が置かれている。
真ん中に小さな小さな文字。
「おいで」という鏡文字。
(この紙は持って帰っていい)

意味わからない作品ばかりで突き放されたような感じだったので、この「おいで」という言葉から距離が近くなった気がした。

この紙の大きさは、赤ちゃん生まれた時の両足の大きさくらいなのだそうだ。
内藤さんは、赤ちゃんは天から真っ直ぐ降りてくるイメージをもっているそうで。
地上においで という意味だったかな。。

そんな話を聞くと、よく意味がわからなかった紙がとても優しいものに感じられる。



「精霊」
中庭にふたつのビニールテープがゆらゆら。
目に見えない風が見えているようだった。
最初、曇り空で残念だったけど、晴れたら、青い空に白い線が美しかった。



「」
美術館の外には大きな池がある。
建物の軒先(?)の池に出ている所にビーズの紐が一筋、半円にぶら下がっていた。
その天井に移った水面のゆらめきの方がきれいだったな。
作品を通して、自然現象に感動。



「」
池に面した手すりには見逃しそうな作品が。
小さな透明な瓶に水が入っている。こぼれそうなくらいギリギリいっぱい。
さりげなく、あやういバランスの作品。



「恩寵」
池にあった作品と同じく、ビーズの紐。
こちらは1本天井からぶら下がっているだけの、一番シンプルな作品。



最後、参加者からの質問の時、内藤さん意外と熱い口調になった。

「内藤さんの社会的な役割は何だと思いますか?」

という問いに

「いい作品をつくること」
「お金がかかっていなくても、たとえ1億円だったとしても、同じように感動させたい」


「お金があっても無くても幸せにならなきゃいけない」


この言葉にとても感動した。


内藤さんは静かな語り口だったけれど、内面にはとても熱いものを持っている。
この話を聞かなかったら、作品を半分も理解できなかったと思う。
本当に聞いてよかった。
でも、こんな素晴らしいコンセプトで作っているのに理解されないのは勿体無い。
作品の近くに解説があった方がよかったと思う。

わからなかったことがわかって、それは広く深い世界だった。
魅力的です、内藤さん。
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poccoアート・デザイン観賞日記。現代アート、パフォーマンスが好きです。本業はウェブでザーナー。

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